静的増分全体制御

 

 

静的増分解析を全体制御する解析条件を一括的に定義します。

全体定義条件は以下の通りです。

1. 初期荷重条件 : 静的増分解析を行うための初期載荷荷重(一般的に重力方向荷重)を設定します。

2. 解析収束条件 : それぞれのステップ別収束のための最大繰り返し数、収束判断条件などを入力します。

3. 剛性低減率 : 部材降伏後の非線形挙動特性を示す剛性低減率(二線形曲線の場合 – 1次降伏、三線形曲線の場合 – 1,2次降伏)を入力します。

4. 分散型(Distributed)梁要素の参照位置指定 : 分散型ヒンジを定義する場合、梁要素の降伏強度の自動計算時に参照する断面の位置を選択します。(もし日本規準(AIJ)の場合にはひび割れモーメント計算時の初期軸力の反映可否を選択することが出来ます。)

 

 

 

リボンメニュー : 増分解析 > 制御 > 全体制御

ツリーメニュー : メニュータブ > 設計 > 静的増分解析データ > 静的増分全体制御

 

 

 

静的増分全体制御ダイアログ

初期荷重

解析のための初期荷重条件を入力します。

初期荷重による非線形解析実行

初期荷重考慮時の一般的な方法です。

静的解析/施工段階解析結果読み込み

1.初期荷重と増分解析の境界条件が違う場合に適用する方法です。

2.施工段階解析の最終段階を初期荷重で考慮する際に使用する方法です。

Note 1

増分解析の初期荷重で施工段階解析の最終段階の部材力と取って解析を遂行する場合、設定した初期荷重に対して増分解析では非線形解析を遂行しなくて施工段階解析で遂行した解析結果を読み込んで処理する方法を適用しています。

Note 2

次の解析条件では設定した初期荷重に対して増分解析で実際非線形解析を遂行しなくて、静的解析で遂行した解析結果を読み込んで処理しています。

- 増分解析で初期荷重と増分解析荷重条件の境界条件/断面増減係数が違う場合

- 増分解析の初期荷重で施工段階解析の最終段階の部材力をとって解析する場合

荷重ケース

初期荷重で適用する静的荷重条件を選択します。

倍率

選択した静的荷重条件に対する荷重係数を入力します。

Note 3

初期荷重入力ダイアログに下のような温度荷重が入力された場合には静的増分解析を実行することが出来ません。

1. 梁断面温度荷重

2. 温度勾配荷重

3. システム温度荷重

4. 節点温度荷重

5. 要素温度荷重

Note 4

初期荷重(一般的に重力方向荷重が載荷された場合)が載荷された場合に発生される応力は静的増分解析時に初期荷重で累積されて処理

されます。しかし発生変位は考慮しません。

Note 5

軸力変動を考慮(PMMタイプを用いる場合)する場合、このオプションを用いて初期荷重を設定する必要があります。

非線形解析オプション

解析時に適用される各ステップでの最大繰り返し回数、収束判断条件などを入力します。

収束失敗を許容

各ステップで収束できない場合はステップ間隔を自動分割して解析する機能です。つまり、最大繰り返し回数を遂行しても収束できない場合に入力した最大サブステップ数で自動分割して解析を遂行します。

Note

チェックオン:収束でいない場合は次のステップに進行する(ただし、不平衡力は次のステップの荷重で考慮される)

チェックオフ:収束でいない場合はメッセージを出力した後解析を終了させる。

最大繰り返し回数

各増分ステップ別に荷重と変位に対する平衡条件(equilibrium condition)を満足するため行う最大繰り返し回数を入力します。

Note

ここで入力したステップ数はすべての静的増分荷重条件に反映されます。

Note不平衡力と収束計算

静的増分解析の各増分では非線形要素の剛性変化とこれによる部材力変化によって加われる外力と外力によって発生される部材力(内力)の間に差が発生されます。このような外力と内力の差を不平衡力(Residual Force)と言います。各増分解析では発生する不平衡力を解消するために繰り返し解析(収束計算)を行い、Genでは繰り返し方法でNewton-Raphson法を使用しています。

繰り返し計算による不平衡力の解消方法は以下の図のようにFull Newton-Raphson法を用い、不平衡力は以下のように処理されます。

 

1. 収束計算を実行する場合 - Newton- Raphson法によって不平衡力が解消され収束判断条件を満足するまで繰り返し解析を実行します。(ただし、最大繰り返し回数まで繰り返し解析を行った場合にも収束判断条件を満足できない場合に残存する不平衡力または収束判断条件を満足する場合に残存する不平衡力は次の増分の外力で処理されます。)

*. 収束条件を満足したとしても不平衡力が0になるのではなく、ただ無視できる程度に小さくなることです。

 

2. 収束計算を実行しない場合(最大繰り返し回数を1に入力した場合) – 不平衡力を次の増分の外力として処理します。

収束判定条件

収束可否を判断する許容誤差を入力します。繰り返し解析過程で計算された誤差が許容値以内に入れば、該当増分ステップに対しては最大繰り返し回数以内でも解析を終了して次のステップに進みます。

 

Note収束条件

繰り返し解析で不平衡力を解消したとしても不平衡力を完全に0まで収束させることは数値解析的に不可能でその必要もありません。従って、不平衡力がある程度以下になったら収束されたと判断して次の増分に進むための収束判断条件を設定します。

繰り返し解析で収束を判定する基準制限は変位と荷重及びエネルギーの三つがあり、この中で一つまたは複数のNormを選択して収束判定に反映します。各制限の定義は下のようです。

 

変位制限

荷重制限

エネルギー制限

 

ここで、

: 変位制限

: 荷重制限

: エネルギー制限

: n番目繰り返し計算段階での有効荷重ベクトル

: n番目繰り返し計算段階での変位増分ベクトル

 

: n回の繰り返し計算によって累積された変位増分ベクトル

 

Note収束判断条件の設定

収束判断条件は変位制限のみを選択して解析することが一般的です。ただし、非常に特殊な場合に変位制限条件のみを選択して収束された場合にも不平衡力が無視出来ない程度に残存し、解析自体が発散する可能性があります。このような場合には追加的に荷重、エネルギー順に追加選択して解析を行うことが出来ます。

 

Note収束条件設定時の注意事項

1.複数の制限を収束判断条件に設定すると一つの条件を選択した場合に比べて収束繰り返し回数が増えます。

2.エネルギー制限を選択すると収束条件を満足できない可能性があります。

3.最大繰り返し回数まで繰り返し解析を実行した場合にも収束判断条件を満足できない場合には残存する不平衡力は次の外力に加われますので直前増分で収束できなかったとしても現在増分で収束できたら、全体解析結果に及ぼす影響は大きくありません。

解析中止

せん断成分に降伏が発生したらプログラムが自動終了します。

せん断成分降伏

チェックオン:梁/柱、壁要素のせん断成分が降伏したらメッセージを出力した後で自動終了します。

チェックオフ:せん断成分が降伏しても終了じまで解析を遂行します。

Note 1

自動終了した後で、終了ステップまでの結果が確認できます。

Note 2

梁/柱要素のみチェックオンして、壁要素はチェックオフした場合は、梁/柱要素のせん断成分が降伏したらその状態で自動終了されます。ただし、壁は選択されてにのでせん断成分が降伏しても既存と同様に終了時まで解析が遂行されます。 

静的増分解析用ヒンジデータオプション

非線形ヒンジスケルトン曲線を一括的に定義します。また分散型ヒンジを用いる場合、梁要素の降伏強度を計算するための断面位置を選択します。

スケルトン曲線剛性低減率の初期値

二線形/三線形曲線(またはスリップ曲線を使用する場合)の場合、1次降伏及び2次降伏に対する剛性低減率を入力します。

 

トリリニア / スリップトリリニアタイプ : 三線形曲線を定義するための1次降伏及び2次降伏発生時の剛性低減率を入力します。

α1:1次降伏後の剛性低減率(α1≦1.0)

α2:2次降伏後の剛性低減率(α2≦α1≦1.0)

 

バイリニア / スリップバイリニアタイプ : 二線形曲線を定義するための1次降伏発生時の剛性低減率を入力します。

α1:降伏後の剛性低減率(α1≦1.0)

Note

ここで、初期値を変更して‘OK’ボタンをクリックすると静的増分ヒンジプロパティの剛性低減率で“全体制御データの値を使用”が選択されます。

 

降伏強度自動計算データ

分散型ヒンジを用いて静的増分解析を実行する場合に梁要素の降伏強度を計算するための断面位置を指定します。また日本規準(AIJ)で提示するひび割れモーメント計算時に諸機軸力の考慮可否を選択します。

分散型ヒンジ梁要素の自動計算時参照位置 : 降伏強度計算のための梁要素断面の位置( i-端、j-端、中央)を選択します。

初期軸力を考慮してひび割れモーメント計算(AIJ) : 日本規準式によってひび割れモーメント計算時に初期荷重を反映します。

Note

日本規準(AIJ)の場合、初期荷重によるひび割れモーメントの計算可否を選択できるオプションがアクティブ化されます。