固有値解析制御

 

 

固有値解析は構造物の質量行列と剛性行列で構成された特性方程式を解き構造物の動的特性を分析する解析です。結果で出力される構造物の主な動的特性は固有モード(またはモード形状)、固有周期(または固有振動数)そしてモード寄与係数があります。

1. 固有モード : 構造物が自由振動(または変形)出来る一種の固有形状です。固有モードは与えられた形に変形させるときに所要されるエネルギーが小さい順に1次モード、2次モード、•••、n次モードといいます。

2. 固有周期 : 固有モードと一対一対応される固有な値で構造物が自由振動状態で該当モード形状でを回振動するとき所要される時間です。

3. モード寄与係数 : 特定モードの影響を全体モードに対する比率で表したものです。

 

固有値解析時の注意事項は以下のとおりです。

1. 引張/圧縮専用要素は固有値解析で線形トラスとして考慮されます。

2. 固有値解析は応答スペクトル解析、時刻歴解析のような動的解析のため必ず先行される必要があります。特に、応答スペクトル解析時に固有値解析で計算された固有周期を用いてそれぞれのモードの加速度応答を計算するため応答スペクトル関数を定義するときに、予想される固有周期の領域を含むようにする必要があります。

3. 質量が入力された節点の自由度が拘束されている場合には、該当質量は全体質量には含まれますが、有効質量には含まれません。そのためモード別質量参与率を評価する場合には質量が入力された成分の自由度を拘束してはいけません。

 

固有値解析を実行するのに必要な制御データを入力します。

固有値解析を実行する手順は次の通りです。

1. モデル > 質量メニューで提供される各種質量の入力機能を用いてモデルに質量データを入力します。

2. 解析 > 固有値解析制御メニューを呼び出して解析する固有モード数とその他の固有値解析に必要な各種データを入力します。

3. 解析 > 解析実行 メニューや 解析をクリックして解析を実行します。

4. 構造解析が問題なく終了すれば、結果 > 固有モード形状機能や結果 >  結果テーブル > 固有モード形状機能を用いて各モードのモード形状と固有振動数(または固有周期)を確認します。

 

Note
モデル > 質量 > 荷重を質量に変換機能を利用すれば、荷重条件の静的荷重データを節点の質量データに変換することができます。この機能を利用して静的地震荷重の計算で入力された固定荷重のデータを質量データで自動入力するようにすればたいへん効果的です。

 

 

 

リボンメニュー : 解析 > 解析制御 > 固有値解析制御

 

 

 

解析タイプ

解析しようとするベクトルを選択します。

 固有ベクトルを選択した場合

Subspace Iteration

Subspace Iterationという行列計算を利用して固有値解析を実行

 

固有値解析制御ダイアログボックス(固有ベクトル)

Lanczos

3重対角行列(Tridiagonal Matrix)を利用して固有値解析を実行

 

 Ritzベクトルを選択した場合

 

固有値解析制御ダイアログボックス(Ritzベクトル)

動的荷重の特性を反映した固有値を計算して比較的少ない数のモードを持って一般固有ベクトルより相対的により正確な結果を与えることができる長所を持った Ritzベクトルを計算して動的解析に使用します。

 

初期荷重ベクトル

Ritzベクトルを計算するための初期ベクトルを生成するために荷重ケースを入力します。 入力可能な条件では静的荷重と地盤加速度荷重を入力することができます。

非線形リンクを使った解析時には非線形リンクの変形を発生する荷重ケースを含ませることができます。

 

生成数(Ritzベクトル)

各荷重ケースで生成する初期ベクトルの数を入力します。

: 入力された条件の荷重を初期ベクトルを計算するための荷重に追加します。

: 既に入力された荷重ケースを修正します。

: 既に入力された荷重ケースを削除します。

 

非線形リンク断面力の初期荷重ベクトル

非線形リンクを使った解析時に非線形リンクの変形と連関されたモードを解析に含める目的に非線形リンクの変形を誘発する荷重を初期ベクトル計算用の荷重で含めます。

 

非線形リンク断面力の全体数

入力された非線形リンクによって生成される初期荷重の数を把握して出力します。

各非線形リンク断面力別(Ritzベクトル)の生成数

それぞれの非線形リンク荷重を持って生成しようとする初期ベクトルの数を入力します。

 

初期荷重ベクトルの全体数

Ritz ベクトルを計算するために入力された初期荷重の数を見せてくれます。

生成するRitzベクトルの全体数

それぞれの初期荷重ベクトルを使って生成する全体 Ritzベクトルの数を見せてくれます。

Ritzベクトルの計算時に1つの荷重ケースでユーザーが設定した数のRitzベクトルを計算することができない場合には不足なモードを優先順位による他の荷重ケースに追加して計算するようにします。 Ritz ベクトル計算時の優先順位はユーザーが入力した荷重ケースの順序を使います。

初期荷重を使用して計算される Ritzベクトルの数がユーザーが入力したモードの数より少ない場合には計算されたモードのみを持って追加的な動的解析を実行するようになります。

入力したすべてのデータを削除する場合には をクリックします。

 

固有ベクトル

 

固有値の数

計算する固有振動数の個数を入力します。

固有値の制限

計算する振動数の範囲を最小及び最大で指定します。

最小値 : 求めようとする範囲の最小振動数

最大値 : 求めようとする範囲の最大振動数

最小振動数から固有値を計算し始めて、指定した範囲内にある固有値を求めます。解析の過程で、固有値が最大振動数より大きくなれば、そこで固有値の計算を打ち切り、最大振動数より小さい固有値を使用して後続の作業をするようになります。

固有値制御データ

部分空間法(Subspace Iteration Method)を使用した固有値の解析方法で、必要なデータで最大繰り返し回数と部分空間の大きさ、収束判定値、及び剛体挙動を求めるための振動数シフト(Frequency Shift)を入力します。

固有値解析には、部分空間法を使用します。連続して繰り返す解析過程で計算された振動数の相対誤差(   )が収束判定値に収まるまで計算を繰り返します。

最大繰り返し回数に至るまでに、求めようとする固有値の相対誤差が収束判定値に収まらない場合には、そこで計算を打ち切り、既に計算された固有値までを使用して後続作業を実行します。

固有値解析は、座屈解析と同時に使用することはできません。また、時刻歴応答解析や応答スペクトル解析を実行する前に、あらかじめ固有値解析を実行して固有値を求めておく必要があります。

また、応答スペクトル解析は固有値解析で求められた固有周期を利用するため、スペクトルデータは予想される固有周期の範囲が含まれるように入力する必要があります。

 

入力された固有値解析データを削除しようとする場合、ボタンをクリックします。

 

 

Q. ケーブルの幾何学的剛性を考慮した固有値解析、動的解析について

 (a) ある状態でのケーブルの幾何学的剛性を考慮した固有値解析が可能でしょうか。

 (b-1) 時々刻々でケーブルの幾何学的剛性を求める動的解析が可能でしょうか。

     直接積分の各時刻ステップにおいて、幾何学的剛性を計算し,逐次更新していく方法

 (b-2) ある状態でのケーブルの幾何学的剛性を用いた動的解析が可能でしょうか。

     直接積分で,あるステップで幾何学的剛性を計算し,それを更新せずに使い続ける方法

A.

a),(b-2)は現在すでに提供している項目です。

(a),(b-2)の適用方法は以下の通りです。

幾何剛性計算に適用しようとするケーブルの部材力を

「荷重>初期断面力>微少断面>初期断面力」

機能を用いてテーブルに入力します。

そのようにして固有値解析及び動的解析時にケーブルの幾何剛性が反映されます。

幾何剛性計算のための部材力が、例えば、自重によるものであれば、自重が入力された静的荷重ケースを作って、

「荷重>初期断面力>微少断面>初期軸力制御データ」

でその静的荷重ケースを追加します。

 

解析を行った後、「結果>結果テーブル>初期断面力」で要素別部材力をコピーして初期断面力テーブルに貼り付けます。

このような方法で自重によるケーブルの幾何剛性を考慮した固有値解析及び動的解析を実行することが出来ます。

(b-1)に対しては現在提供していません。開発チームに頼んでみた結果、以下のような連絡を受けました。ケーブルの幾何剛性は自重によって決定されると地震荷重によって大きく変わらないため、(b-2)のようにあるステップでの幾何学的剛性を計算して、それを更新しないで使い続ける方法を適用することで実務では十分であると考えられます。

Q. 固有値解析結果について

添付データをご確認下さい。

このデータは固有値解析制御の解析次数を9としています。

このまま解析を行いモデルビューでモード形状を確認すると

モード1~9まで同じ形状になっています。

結果テーブルで固有周期を確認するとやはりモード1~9までほとんど同じです。

解析次数を8にするとそれなりの解析結果が出ているように見えます。

境界条件が何か影響しているように思えますが

特にWARNINGの表示もありません。

なぜでしょうか。

A.

このモデルの節点バネの剛性を確認すると(添付データ参照)

SDy=1e+018kN/mであり、

他の部材の剛性と比べて大きい過ぎるので、これが原因で数値誤差が発生し、

このような結果が出力されたと思います。

剛性について決まった基準はありませんが、

他の部材の剛性と比べて10000倍くらいの剛性で十分拘束できると思います。

従って、現在のバネの剛性を小さくすることをお勧めします。