時刻歴解析は構造物に動的荷重が作用する場合に構造物の動的特性と加えられる荷重を使用して任意の時刻に対する構造物挙動(変位、部材力など)を動的平衡方程式の解を利用して計算するものです。時刻歴解析のためにモード重ね合わせ法(modal
superposition method)と直接積分法(direct method)を使用しています。
線形解析の特性上、非線形性は考慮されません。非線形材料を使用した場合、等価の線形弾性材料に変換されて解析が行われます。
線形時刻歴解析では水位の定義が可能であり、これに対する有効応力の結果を見ることができます。また、材料の排水/非排水効果を含む解析が可能です。
モード重ね合わせ法
モード重ね合わせ法は構造物の変位を互いに直交性を持つ変位形状の線形組み合わせを仮定します。これを通して選択されたモードに対するより簡単な時間積分方程式を利用して動的応答が計算できます。モード重ね合わせ法は構造解析プログラムで多く使用され、大型構造物の線形動的解析に少ない計算コストで動的応答が計算できる効果的な手法です。しかし、全体応答の正確性は使用された固有モード数に左右されるので計算に必要な固有モード数を適切に選択する必要があります。
直接積分法
直接積分法は全体解析領域の自由度を未知数とする時刻歴解析で全体の自由度に対する動的平衡方程式を時間に対して漸進的に積分して解を求める手法です。平衡方程式の形態の変化なしで時間ステップ毎に積分を使用して解が求められ、多様な積分手法が使用されることもできます。直接積分法の場合は全ての時間ステップに対して解析を行うので時間ステップ数に比例して解析時間が所要されます。
線形時刻歴解析の荷重
線形静的解析では時間に伴って変化する動的荷重(dynamic load)が使用できます。
時間ステップの定義
時刻歴解析の時間ステップは直接積分法とモード重ね合わせ法で異なる意味を持ちます。
直接積分法は定義された時間ステップを利用して暗黙的(implicit)手法を利用して時間積分を行うことになります。したがって、定義された時間ステップの大きさによって正確度の差が生じます。一般的に関心最小周期の10%未満の時間ステップを使用すると正確な結果が得られます。大きな時間ステップを使用すると時間積分の過程で誤差が生じ、逆に過渡に小さな時間ステップを使用すると不必要な計算コストが発生してしまいます。
モード重ね合わせ法は時間積分を解析的(analytical)に行います。そのため、与えられた時間ステップは計算結果の精度に影響を及ぼしません。モード重ね合わせ法の時間ステップは時刻歴の中間結果をみるための時間を指定するために使用されます。
直接積分法とモード重ね合わせ法の比較
一般的に直接積分法がモード重ね合わせ法に比べて解析時間が多く所要されます。そのため、多くの時間ステップが必要だったりモデルの規模が大きな場合にはモード重ね合わせ法を利用するのが効果的です。解析荷重の周波数付近で多くの固有振動数が計算される場合(例えとして、高周波가진の様に活動振動数が多い問題)には直接積分法を利用するのが正確な結果が得られます。
区分
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直接積分法
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モード重ね合わせ法
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解析時間
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解析時間の消耗が多い
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解析時間が短い
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主要事項
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時間ステップの選定が重要
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モード数の選定が重要
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モデル規模
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小規模モデルに適合
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大規模モデルに適合
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解析精度
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解析時間が比較的長く掛かる方だが精度は高い
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選択されたモード数に応じて精度に差が発生
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